ニスについて考えてみました。Vol.1 (くじら亭のミニチュアものづくり)

くじら亭です。
こんにちは。今回もお読みいただきましてありがとうございます。

日本ミニチュアフード協会認定コースでも、
作品を完成させた後、最後にニスを塗りましょう!と教えていただいたニスですが、
なぜニスって要るのか、色々ある中でどのニスが最適なのか、
って、あんまり考えないですよね。

今回、ちょっとニスについて考えることがあったので、その結果を皆さんと共有したいと思います。

※ 当記事は、ミニチュアフードをご自分でお作りの方に、実際の作品の作る過程をネタに、ちょっとした(やや高度な)テクニックや道具・材料の紹介をしたいな、と思って書いています。基本的な道具や材料の使い方までは当記事ではお伝えできないので、ミニチュアフードを作ってみたい、作り方を知りたいと思っている方は、日本ミニチュアフード協会認定コース(基礎・応用)を受講されることをお勧めします。

そもそもニスって何なのでしょうか?

そもそもニスって何か、ご存じでしょうか。

私もわかっていたわけではないので、ちょっと調べてみました。
インターネット上の百科事典、ウィキペディアでは、
『木材などの材料の表面を保護するために用いられる塗料の一種で、透明で硬い上塗り剤である。
英語の「Varnish」が日本語に移入される際に「ワニス」と訛り、さらにその語を短縮して「ニス」と呼ばれるようになった。 』
と書いてあります。

基本は、「木材等の表面保護の為に塗る」ということだそうです。
ミニチュアフードだと作品はほとんどが樹脂粘土なので、樹脂粘土の表面保護の為に塗るということですね。

私も、結構最近まで、「和ニス」という和風の「ニス」があるかと思っていたのですが、
元々が「ワニス」で、短縮して「ニス」って呼んでいるんですね。

ニスの仕組みってどうなっているのか?

ここからは、私の私見も入ってきますが、
もう少し、ニスについて調べたこと、感じたことを書いていきます。

まず、当たり前のように思っていますが、ニスって(というか、塗料全般ですが)、
塗るときは液体ですが、乾くと膜状の個体になりますよね。

これは、ニスが液状の時は、「溶剤」と呼ばれる液体に、「樹脂」が溶けている状態です。
(正確には、溶けている場合、漂っている場合、ふやけている場合等が色々あるようですが..)
それを木材等の表面に塗った後、溶剤が気化すると、樹脂だけが残って、固まります。

この「溶剤」と「樹脂」がそれぞれ何を使うか、によってニスの性質や種類が変わってきます。

ニスの種類について

まず、溶剤の種類ですが、ニスに使われる溶剤として、主に、水と有機溶剤の2種類があります。
有機溶剤も水溶性(アルコール系)と非水溶性(油性/ラッカー系)の2種類があります。

ニスを多く発売している和信ペイントさんのホームページを調べてみると、
「水性」、「水溶性」、「油性」という3タイプのニスを販売されています。
「水性」は水、「水溶性」はアルコール系、「油性/ラッカー系」は石油系溶剤に樹脂を溶かしたものだそうです。

水溶性ニスというのは、水ではなく水に溶ける溶剤を使っているんですね。

次に、樹脂ですが、主にアクリル樹脂とウレタン樹脂というのがあります。
和信ペイントさんのホームページによると、
『アクリル樹脂は乾いた後も表面に柔らかさが残るため「飾っておく工作品向け」、
ウレタン樹脂は乾くと固い膜ができるため「実用的な作品にも使える」、
樹脂の種類は作品の強度を左右する重要な要素なので、目的に合ったものを選んでください。』
とのことです。

ニスは、これらの組み合わせにより種類が分かれていて、主な製品だけでも、

◆ 水性ニス(水性アクリルニス)
溶剤に水、樹脂にアクリル樹脂を使用したニス。使った道具は(固まる前だと)水洗いできます。

◆ 水性ウレタンニス
溶剤に水、樹脂にウレタン樹脂を使用したニス。
和信ペイントの水性ウレタンニスは、食品衛生法の安全基準に適合しているので、
木製の食器やカトラリー、トレーなどに使えるそうです。
使った道具は(固まる前だと)水洗いできます。

水性ニス、水性ウレタンニスともに、安全性は高いのですが、
-溶剤が水なので、筆塗りするときに気泡ができやすく、きれいに塗るにはコツがいります。
-プラスチック等に塗装する場合は、はじかれて塗りにくいです。

◆ 水溶性アクリルニス
溶剤にアルコール系、樹脂にアクリル樹脂を使用したニス。使った道具は(固まる前だと)水洗いできます。
筆塗りは一番やりやすいです。また、スプレーもあります。
プラモデル用の水性塗料(タミヤカラー、クレオスの水性塗料)は、水溶性アクリル塗料なので、この仲間です。
溶剤が引火性があるので、換気は必須です。

◆ 油性ニス/ラッカーニス
硬い塗膜を作る、もっとも耐久性の高い種類ですが、
溶剤が有害なのであまりお勧めしません。

こうしてみていると、家庭で使用する分には、
粘土や木には水性、プラスチックには水溶性が良さそうですね。

この後、多少の実験等も実施して、私なりにニスの適材適所を考えていきたいと思いますので、お付き合いください。

ところで、樹脂が水に溶ける?ってどういうことだろう。

でも、ここでちょっと疑問がわいてきませんか?

アクリル樹脂やウレタン樹脂が水に溶けているってどういうことだろうって。
アクリルやウレタンは、水には溶けませんよね。

これを可能にしているのが、エマルジョンという技術だそうです。

エマルジョンとは、樹脂の粒子が乳化剤を介して、水中に均一に分散している状態だそうで、
身近な例でいうと、牛乳の中に、脂肪分が溶け込んでいる状態がこれにあたるそうです。

そして、水が蒸発すると、樹脂同士が密着して反応して膜を形成するそうです。
(充填⇒融着⇒拡散 というプロセスを経るそうなのですが、よくわからないです....)

なので、膜を形成してしまうと、粒々ではなくなるので、水に溶けなくなるんですね。

木工品におけるニスの役割

ニスの役割について、「木材などの材料の表面を保護するため」とありましたが、
これをもう少し掘り下げたいと思います。

ここからは、考察という名の私見ですがお付き合いください。

木材って、繊維の束でできているのですが、繊維同士の結束が弱いんですね。
カッティングボードの記事の時に、繊維のほつれを防ぐためにニスを塗ってから紙やすりをかけたのを覚えている方もおられるかと思います。

また、多孔質で、親水性が高く、かつ柔らかいので、汚れが浸透しやすく、しかも傷がつきやすいです。

ですので、ニスを塗ることで、

①繊維同士を結合させ、はがれを防ぐ
②表面をカバーして汚れや水をつきにくくする
③硬い表面で傷を防ぐ

の、3つの役割を持っていると思っています。

ミニチュアフードにおけるニスの役割

では、ミニチュアフードの場合はどうでしょうか。

キーホルダーやバッグチャームように、アクセサリーにする場合には、表面が擦れたり、当たったりします。
粘土も、木材ほど粗くはないのですが、細かい繊維や粒子の集まりなので、その間に隙間があります。
ですので、木材の繊維のはがれと同じように、粘土の一部がポロリと取れたり、隙間に水が入ったり、傷が付いたりします。
ニスを塗ることで、

①表面の強化
 粘土の成分同士を樹脂で固定し壊れにくくする
②表面の防水・防汚
 粘土の表面を防水の膜で覆い水や汚れを防ぐ
③表面の防傷
 粘土の表面を硬い膜で覆い傷を防ぐ

といった効果が期待できます。
(だんだんと、文章が硬くなってきましたね。ここから少し戻します。)

あと、置物にする場合には、ものにぶつけたりはしないけど、
空気中の湿気や、手についた水や油が付いたりしますので、
「②表面の防水・防汚」が大事になってきます。

あと、粘土やアクリル塗料は艶消しになってしまうので、
ニスを塗ることで「表面のツヤだし」ができることもあります。

どのニスが適しているかテストしてみることにしました。

色々書きましたが、「で、結局どのニスを使えばいいの?」と思いますよね。
私も、結局どれを使えばいいのか聞かれても、言い切れないなぁ、と思っています。

そこで、ニスを塗る塗らないでどのぐらいの差が出るか、
また、ニスの種類で差があるか、実験をやってみることにします。

用意したのが、
樹脂粘土(モデナ)にアクリルガシェ(アクリル絵の具)で色付けしたものを平たく伸ばしたものです。

それぞれに、
1)水性アクリルニス
2)水性ウレタンニス
3)なにも塗らない
4)クレオスのTOPコート(水溶性アクリル塗料)

を塗って、色々テストしてみようと思います。
次回以降で、テストの結果を紹介しようと思いますので、ご期待ください。

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