ニスについて考えてみました。Vol.2 (くじら亭のミニチュアものづくり)
くじら亭です。こんにちは。
前回は、「ニスとは」とか「ニスの種類・性質」について書かせていただきました。
今回からは、「で、ニスはどれを使えば良いの?」について書くのですが、そのためには実際に試すのが一番!ということで、色々実験していきたいと思います。
実験と言えば、子供のころ、機械の構造とかが好きで、どういう仕組みになっているかを知りたくて、目覚まし時計を分解して怒られたものです。
最近はほとんど電子化されてきて、分解しても仕組みがわからないのが残念ですが。
ということで、前回の最後に紹介したテスト用ピースを使って、確かめていきたいと思います。
まずは、前回の記事で書いた、
①表面の強化
粘土の成分同士を樹脂で固定し壊れにくくする
②表面の防水・防汚
粘土の表面を防水の膜で覆い水や汚れを防ぐ
③表面の防傷
粘土の表面を硬い膜で覆い傷を防ぐ
に沿ってテストをしていきます。
※ 当記事は、ミニチュアフードをご自分でお作りの方に、実際の作品の作る過程をネタに、ちょっとした(やや高度な)テクニックや道具・材料の紹介をしたいな、と思って書いています。基本的な道具や材料の使い方までは当記事ではお伝えできないので、ミニチュアフードを作ってみたい、作り方を知りたいと思っている方は、日本ミニチュアフード協会認定コース(基礎・応用)を受講されることをお勧めします。
目次
- 乾いた粘土をのこぎりで切ってみました。(①表面の強化 のテスト)
- 結果は木材と逆となりました。
- 水性ペンで塗った後、水を含ませた綿棒で拭き取ってみました。(②表面の防水・防汚のテスト)
- ニスによっても、ペンの色によっても違いが出ました。
- コーヒーや醤油でもやってみました。
- コーヒーや醤油では、差がつきませんでした。
- いろいろなもので、表面をゴシゴシしてみました。(③表面の防傷のテスト)
- 消しゴムで20回ぐらいこすってみましたが、全然変化なしでした。
- 続いては、過酷なテストとして、240番の紙やすりで30回ごしごししてみました。
- ワイヤーブラシでもこすってみました。
- ということで、表面保護に関するまとめです。
乾いた粘土をのこぎりで切ってみました。(①表面の強化 のテスト)
まずは、「①表面の強化:粘土の成分同士を樹脂で固定し壊れにくくする」のテストをしていきたいと思います。
木材の場合、繊維自体の強度に比べて、繊維同士の強度が大きく落ちるので、そこをニスで強化するのは非常に効果が有ったのですが、
粘土には木材の繊維のようなものが無いので、どのような結果になるか、興味が有ります。
ということで、木材のように、「乾いた粘土をのこぎりで切る。」というのを、やってみました。
写真の様な試験片を、木工用ののこぎりで傷をつけてみました。
ちなみに試験片には、左から、
①水性アクリルニス、②水性ウレタンニス、③塗らない、④TOPコート(水溶性アクリル塗料)
となっています。
結果は木材と逆となりました。
下の写真ではわかりにくいのですが、
「②水性ウレタンニス」を塗った部分は、のこぎりで削れた部分以外が、少し削れてしまっています。
「①水性アクリルニス」でも、ほんの少し、削れた部分が有ります。
「③塗らない」や「④TOPコート(水溶性アクリル塗料)」では、のこぎりの後がまっすぐ出ています。
考察ですが、粘土の場合、
-木材のような繊維が無い
-粒子同士の接着力が弱い
ことがあり、
「②水性ウレタンニス」の様に塗膜が強いニスの場合、のこぎりで切ると、ニスの塗膜によって隣接する粒子も引きちぎられる場合が有ったのだと思います。
「①水性アクリルニス」も、「②水性ウレタンニス」ほどではないのですが、同様の現象起こったのだと考えられます。
「④TOPコート(水溶性アクリル塗料)」は、「①水性アクリルニス」と同じアクリル樹脂ですが、この現象は起こっていません。
多分、TOPコートだけはスプレー塗料なので、塗膜が薄く、粘土を引きちぎるほどの塗膜ができていなかったのでと思われます。
まぁ、ミニチュアフードで、ニスを塗った後でのこぎりで切るということは、ほとんどないのですが、
樹脂の塗膜で強度が出ていることは少しわかりました。
水性ペンで塗った後、水を含ませた綿棒で拭き取ってみました。(②表面の防水・防汚のテスト)
②の「粘土の表面を防水の膜で覆い、水や汚れを防ぐ」のテストとして、水性ペンで塗って少し乾燥させた後、水を含ませた綿棒で拭き取ってみました。
実施したのは、
-黒と青のラッションペンで線を引き、20分ほど乾かす。
-水を付けた綿棒でこする
というテストです。
ニスによっても、ペンの色によっても違いが出ました。
結果が下の写真です。
同じラッションペンなのに、黒と青で全然違うので、追加で赤も塗っています。
①水性アクリルニスでは、
黒:わずかに残る
青:残らない
赤:わずかに残る
②水性ウレタンニス
黒:ほんのわずかに残る
青:残らない
赤:わずかに残る
③塗らない
黒:しっかり残る
青:ほんのわずかに残る
赤:多少残る(黒ほどではないけど)
④TOPコート(水溶性アクリル塗料)
黒:わずかに残る(①水性ニスより、ほんのちょっと余計に残っている感じ)
青:ほんのわずかに残る
赤:少し残る
という結果になりました。
ペンの色によって結構違いが出たのはびっくりですが、ニス(またはTOPコート)を塗るか塗らないかの差は大きいですね。
ニスの種類による差も、多少ありました。
テスト結果は、
②水性ウレタンニス>①水性アクリルニス>④TOPコート>>>③塗らない
でした!
コーヒーや醤油でもやってみました。
コーヒーや醤油でもやってみました。
なんか、洗剤のテストの様になってきました...
上がコーヒー、下が醤油です。
これを30分ほど置いて乾燥させ、水をつけた綿棒でふき取ります。
試験片の数が足らず、ラッションペンのテストをやった試験片を使用しています。
コーヒーや醤油では、差がつきませんでした。
下の写真が結果です。
コーヒーや醤油では、差がつきませんでした。
というか、わかりませんでした。
黄色い粘土でテストをしたので、いろんな角度で光を当てながら見たのですがシミ等は見られませんでした。
このテスト、洗剤のテストを白いTシャツでやるように、白い粘土でやるべきでしたね。
いろいろなもので、表面をゴシゴシしてみました。(③表面の防傷のテスト)
「粘土の表面を硬い膜で覆い傷を防ぐ」のテストとして、まずは、消しゴムでこすってみました。
消しゴムでこするテストって、膜そのものの強さというより、膜が素材にどれだけ強く食いついているかのテストになります。
消しゴムで20回ぐらいこすってみましたが、全然変化なしでした。
消しゴムで20回ぐらいこすってみましたが、全然変化なしでした。
ニスやトップコートは、粘土にしっかりと食いついていますね。
なんかの拍子にペロンとはがれることはなさそうです。
続いては、過酷なテストとして、240番の紙やすりで30回ごしごししてみました。
続いては、240番の紙やすりで30回ごしごししてみました。
ミニチュアフードをバッグチャームにした場合なんかは、結構バッグと擦れたり、壁に当たったりで、このような衝撃を受けることも多いかもしれません。
今回は、クレオス社の、カードタイプの紙やすりを使用しました。
私は、この紙やすり、結構便利に使っています。
台紙自体に厚みがあって、当て木をしなくてもある程度平面に削れるのと、大きさ的にもミニチュアフードのちょうど良くて、カットする必要がないので。
で、ごしごしの結果ですが、
①水性アクリルニス>②水性ウレタンニス>>④TOPコート>③塗らない
という結果になりました。
和信ペイントさんのWEBサイトでは、水性ウレタンニスが一番膜が硬いといわれていたので、
①水性アクリルニス>②水性ウレタンニスが意外なのですが、
実はこれ、①水性アクリルニスのほうが樹脂が柔らかいので、紙やすりで削られたときに、少しだけ粘った結果なのかなと思っています。
ワイヤーブラシでもこすってみました。
ワイヤーブラシでこすってみました。
紙やすりの時と違って、粘土自体にもガンガン傷が入っていきます。
結果としては、
②水性ウレタンニス>①水性ニス>>④TOPコート>③塗らない
となりました。
紙やすりとはことなり、②水性ウレタンニス>①水性ニスとなりました。
紙やすりの様な細かい傷には、水性アクリルニスの柔らかい膜が粘る効果があるのですが、
ワイヤーブラシの様な大きい傷だと、水性アクリルニスの柔らかい膜は、突破されてしまうんでしょうね。
今回は、②水性ウレタンニスの硬い膜が勝ちました。
ということで、表面保護に関するまとめです。
ということで表面保護に関してまとめてみます。
①水性アクリルニス、②水性ウレタンニス、両方とも、防汚、防傷ともに、非常に効果的ですね。
やはり、ミニチュアフードは、ニスを塗る効果は大きいです。
④TOPコートに関しては、防傷は劣りますが、防汚は十分ですね。
ミニチュアフードの置物等、持ち歩かないものは、トップコートが効果的かもしれません。
スプレータイプなので、均一に塗りやすいのも良いですね。
ただ、引火性があるので、換気が良い場所で作業がする必要がありますが。
①水性アクリルニス、②水性ウレタンニスは、アクセサリーに使っている分には大きな差がないなぁ、というのが結論です。
ニスやトップコートで表面が保護されるのは判るのですが、
実際にニスを塗ると、色合いが変わってしまったり、フランスパンの表面がつやつやになってしまったり、タミヤ社の焼き色の達人を塗っていたら流されてしまったりしますよね。
このように、表面を保護しても、作品自体をダメにしたら元も子もありません。
ということで、次回は、ニスを塗ったときの作品への影響をテストできればと思います。
しばらくニス特集、続きます。
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