ニスについて考えてみました。Vol.3 (くじら亭のミニチュアものづくり)

くじら亭です。こんにちは。

前回は、ニスの表面保護のテストを書かせていただきました。結果としては、

汚れと傷の防止も考えると、「水性アクリルニス」や「水性ウレタンニス」が良い。
汚れの防止だけでよい場合は、「TOPコート」がスプレータイプなので、均一に塗りやすいという利点がある。

でも、実際にニスを塗ると、色がにじんだり、色合いが変わってしまったりしますよね。
表面を保護しても、作品自体がダメになったら本末転倒、元も子もありません。

ということで、今回はまず、ニスを塗ったときの、にじみや流れ出し等の、下地への影響をテストしていきたいと思います。

※ 当記事は、ミニチュアフードをご自分でお作りの方に、実際の作品の作る過程をネタに、ちょっとした(やや高度な)テクニックや道具・材料の紹介をしたいな、と思って書いています。基本的な道具や材料の使い方までは当記事ではお伝えできないので、ミニチュアフードを作ってみたい、作り方を知りたいと思っている方は、日本ミニチュアフード協会認定コース(基礎・応用)を受講されることをお勧めします。

絵具等への影響を調査するためのテストピースです。

絵具等への影響を調査するためのテストピースを作りました。

前回は、色を濃くしてシミが判別できなかった反省もあり、薄めの色ということで、
パンの生地色を混ぜた樹脂粘土を、薄く伸ばしたものを使用します。

テストとしては、このテストピースに色々なもので線を引いて、その上に各種ニス等を塗って影響を見てみました。

テストに用いた絵具や筆記具、着色剤等です。

私自身が、ミニチュアフードで着色の為に使用している絵具や筆記具、着色剤等をテストしました。

使用したのは、上から順番に、

①焼き色の達人

タミヤの焼き色の達人です。
パンの焼き色でグラデーションを付けるには、この焼き色の達人が一番簡単できれいにできると思っています。
ただ、触ると剥がれたり、水に溶けたりして、安定しないので作品には使いにくいのですが、ニスをうまく塗ることで解決できるなら、活用したいですよね。

②ガンダムマーカー(銀色)

ペンタイプの塗料で、ペン先を数回押し込むと塗料が出てきて書けるようになります。
食器の縁などに、銀色や金色を塗る際に使用しています。
筆が要らないので、プラモデル用の塗料で銀や金を塗るより、手軽にしかも線をきれいに引けるので便利です。

③ラッションペンプチ(水性ペン)

水性ペンです。細かい線を引くのに便利ですね。

④ラッションドローイングペン(水性顔料インク)

同じラッションペンという名前ですが、ラッションペンプチとインクの種類が違います。
水性顔料インキを使用していますので、耐水性・耐光性に優れているとメーカーのWEBサイトには書いてあります。
色が黒しかないのですが、ラッションペンプチよりにじみにくいので、黒はこちらを使うことが多いです。

⑤オリジナル絵具

ご存じ、日本ミニチュアフード協会オリジナル絵具です。
今回のテストでは、キウイグリーンを塗っています。

⑥アクリル絵の具

リキテックス社のアクリル絵の具です。
今回のテストでは赤を使用しました。

⑦色鉛筆(三菱鉛筆)

私は、パンの焼き目を付けるときに結構色鉛筆を使います。
デニッシュ系のパンの縁を塗るのには最高です。
テストでは、茶色の線を引いています。

この7種類の塗料・着色剤の上にニスを塗って、溶け出したり、色目が変わったりしないかを確認していきます。

この上にニスを塗ります。

この上にニスを塗ります。

塗り方は、以下の5種類(何も塗らないを含めて)の方法で実施します。

①水性アクリルニス
今回は水性ニスの代表として水性アクリルニスを筆塗りしています。

②タミヤニス(水溶性ニス)
瓶に付属の筆を使いました。
このニスを選んだのは、結構粘りが強いので、それが作品の出来上がりにどのような影響があるか、確認したかったからです。

③何も塗らない

④トップコート

クレオス社のスプレータイプの透明塗料です。
成分は水溶性アクリル塗料なので、②タミヤニスと同じ成分です。でも粘り具合は全然違います。

⑤トップコート+水性アクリルニス

実は、焼き色の達人を使ったときに、私はトップコートを軽く吹き付けて、その上からニスを塗っています。
トップコートは薄く塗れるので、塗料・着色剤が溶け出しても広がらず、トップコートの樹脂に混ざって定着すると考えているからですが、本当にそうなのか確認するため、テストしました。

①水性アクリルニスと②タミヤニス(水溶性ニス)の結果です。

①水性アクリルニスと②タミヤニス(水溶性ニス)の結果です。

①水性アクリルニスですが、

「焼き色の達人」が結構にじんでいますね。
焼き色が周りに広がってしまっています。

あと、「ガンダムマーカー(銀色)」は、金属感が少し無くなってくすんだ感じになります。
これは、全部のニスに共通なので、「ガンダムマーカー(銀色)」の金属感を残したい場合は、ニス等を塗った後で「ガンダムマーカー(銀色)」を塗る必要がありそうです。
本物の陶磁器も釉を塗って、最後に金や銀を塗るので、おんなじですね。

あと、「ラッションペンプチ」や「色鉛筆」でも、わずかににじみがありました。
絵具類はほとんどにじんでいませんでした。

次に、②タミヤニス(水溶性ニス)の結果です。

②タミヤニスは、結構濃厚なニスなので、塗膜が厚めになってしまいます。
塗り上りの表面は平滑で奇麗なので、ちょうどゼリーでコーティングをしたような感じになってしまいます。
それと、なぜか、粘土が場所により少し盛り上がってしまいました。なぜかは判らないのですが。

意外だったのですが、「焼き色の達人」が、もっとにじむかと思ったのですが、ほとんどにじんでいません。

「ガンダムマーカー(銀色)」の金属感が無くなるのは、水性ニスと同じです。

「ラッションペンプチ」は、すごくにじみました。写真で見てもよくわかると思います。タミヤニスで仕上げる場合には、水性ペンは要注意です。
でも、「ラッションドローイングペン」は全然にじまなかったので、不思議です。

それ以外の絵具、色鉛筆等はほとんどにじんでいませんでした。

以下私見なのですが、
タミヤニスは、溶剤に比べて樹脂の量が多いので、(焼き色の達人の)粉末が溶けにくいこと、
また、粘りが強いので、乾燥するまでに樹脂が動かないので、にじみにくかったのかなと思っています。
ラッションペンプチは染料系なので、少なめの溶剤でも溶け込んでいったのかもしれません。

水性ニスは、粘りがないので、(焼き色の達人の)粉末が水に溶けて、動いていったのかもしれません。

④トップコートと、⑤トップコート+水性アクリルニスの結果です。

④トップコートと、⑤トップコート+水性アクリルニスの結果です。

④トップコートは

焼き色の達人を含め、にじんだペン・絵具等は有りませんでした。
スプレータイプで塗膜が薄いので、絵具が溶けてもあまり動かないのと、絵具等が動く前に乾燥してしまうからだと思います。

あと、「ガンダムマーカー(銀色)」に関しても、金属感のなくなり具合、くすんだ感じが、水性ニスやタミヤニスより少しマシでした。

⑤トップコート+水性アクリルニスも、④トップコートと同じ結果です。

水性アクリルニスを塗っても、①の時の様な「にじみ」は全く起こりませんでした。
水性アクリルニスを塗ることで、トップコートだけより、表面がより平滑になって艶もよくなります。

【結果発表】

結果発表です。

テストの結果からは、

絵具のみで着色している場合には、どのニスでもOKです。
前回のテストと合わせると、
置物にする場合は、①水性アクリルニス(または水性ウレタンニス)か④のトップコートが、
アクセサリーにするには、①水性アクリルニス(または水性ウレタンニス)が良さそうですね。

「焼き色の達人」や「水性ペン」、「色鉛筆」を使っている場合には、
④トップコートのみ(置物等)か、⑤トップコート+水性アクリルニス(アクセサリー等)が良さそうです。

あと、今回のテストでは、絵具等のにじみを主にチェックしましたが、
実際には、上にニス等の透明の皮膜が乗ることで作品の雰囲気が変わってしまう可能性があります。

なので、実際に作品に塗ってみて、風合いの変化も見てみたいと思います。

テストピースとしては、フランスパンとアンパン(のゴマ抜き)を6個ずつ用意しました。

フランスパンは、オリジナル絵具、アクリル絵の具、色鉛筆、焼き色の達人を総動員して着色しています。
アンパンは焼き色の達人のみで着色しています。

次回は、テストピースに実際にニス等を塗ってみた結果を発表します!!

焼き色の達人で塗ったパンのアップです。

焼き色の達人で塗ったパンのアップです。

私は縁をぼかすのに、焼き色の達人に付属のスポンジで着色した後、綿棒で境目の部分をなじませています。

このグラデーションは、絵具では出にくいですよね。

焼き色の達人が乾いた時の対処法

便利な焼き色の達人ですが、使い切る前に乾燥してしまい、ポロポロになるときがありますよね。

そういうとき、私は、タミヤカラーの薄め液(X-20Aアクリル塗料溶剤)を数滴たらします。
しばらく放置すると、乾燥していた焼き色の達人が、しっとりと復活します。

あくまで経験則で、メーカの保証は有りませんが。

今回の記事はここまでです。
お付き合いいただきましてありがとうございました。

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