ニスについて考えてみました。Vol.4 (くじら亭のミニチュアものづくり)
くじら亭です。こんにちは。
前回のテストでは、絵具等のにじみを主にチェックしました。
結果は、絵具のみで着色している場合には、
-置物にする場合は、①水性アクリルニス(または水性ウレタンニス)か④のトップコートが、
-アクセサリーにするには、①水性アクリルニス(または水性ウレタンニス)が良さそう。
「焼き色の達人」や「水性ペン」、「色鉛筆」を使っている場合には、
-④トップコートのみ(置物等)か、⑤トップコート+水性アクリルニス(または水性ウレタンニス)(アクセサリー等)が良さそう。
でした。
作品への影響と考えると、絵具のにじみだけではなく、ニスを塗ることで作品の雰囲気が変わってしまう可能性があります。
ですので、今回は、そのあたりをテストできればと思います。
ということで、試験ピースとしたのは、アンパンとバゲットです。
アンパンは焼き色の達人のみで着色しています。
バゲットは、オリジナル絵具、アクリル絵の具、色鉛筆、焼き色の達人を総動員して着色しています。
この試験ピースに対して、実際に試したニスの塗り方は、
(1)トップコートを厚めに吹く。
(2)トップコート薄吹きの上から水性ニスを塗る。
(3)タミヤニスを塗る。
(4)メイク用の筆で水性ニスを塗る。
(5)メイクアップスポンジで水性ニスを塗る。
をやってみました。
(1)、(2)は、前回のテストで好成績だったものです。
(4)、(5)は、トップコートが水溶性の有機溶剤のスプレーなので、
-有機溶剤なので、換気設備が必要。
-コストが高い
等の課題もあるので、できればトップコートなしでも、水性ニスをうまく塗れれば良いのになぁ、と思い実験してみました。
水性ニスを塗る際に、筆で塗るから「焼き色の達人」や「色鉛筆」が流れてしまうのでは?という仮定の元で、柔らかい筆や、筆以外で塗る方法を工夫してみた結果です。
では、実験開始です。
※ 当記事は、ミニチュアフードをご自分でお作りの方に、実際の作品の作る過程をネタに、ちょっとした(やや高度な)テクニックや道具・材料の紹介をしたいな、と思って書いています。基本的な道具や材料の使い方までは当記事ではお伝えできないので、ミニチュアフードを作ってみたい、作り方を知りたいと思っている方は、日本ミニチュアフード協会認定コース(基礎・応用)を受講されることをお勧めします。
目次
まずは、トップコートを薄く吹きました。
まずは、トップコートを薄く吹きました。
これは、
(1)トップコートを厚めに吹く。
(2)トップコート薄吹きの上から水性ニスを塗る。
の準備のためです。
下の写真を見ていただくとわかるのですが、ほとんど吹き付けたのがわからないぐらい、ほんとに薄く吹き付けています。
「焼き色の達人」の固着にはこれで充分だと思っています。
(1)その上から、トップコートを厚めに吹いてみました。
その上からトップコートを厚めに吹いてみました。
手前が、表面を保護するためにはある程度の厚みが必要なので、トップコートを追加で3~4回吹き付けたものです。
アンパンの表面が光るのはOKなのですが、バゲットの表面も少しテカっているのがわかりますか?
真横から見るとテカりがよくわかります。
真横から見るとテカりがよくわかります。
アンパンは良い感じに仕上がりました。グラデーションもそのままです。
バゲットは、テカリすぎですね。実は、トップコートの艶消しというのを持っているので、
最後にそれを振りかけているのですが、それでも結構テカってしまっています。
これでは、バゲットの雰囲気が変わってしまいますよね。
ツヤの有無ができる原理の説明です。
バゲットのつやを落とす前に、ツヤの有無ができる原理を説明します。
下の図の①の様に、光が均一に反射する状態が、ツヤの有る状態です。
ニスを塗ると表面張力等で表面が均一になり、光が均一に反射されます。
鏡の表面、新車の塗装などの光り方がまさにこれですね。
対して、光が乱反射する状態が、ツヤ消しの状態です。
紙やすりのように、表面がざらざらしているものはこのようにツヤ消しになります。
で、ニス等を艶消しにするにはどうしているかというと、下の図の②の様に、小さな透明の粒子を中に混ぜて、表面を凸凹にするんですね。
今回のように、ツヤ消しのニスを厚塗りした際にどういうことが起こるかというと、
ニスを追加で塗った時に、下の図の③の様に、下地のニスが少し溶けて、つや消しの粒子が沈み込みます。(混ざりこんでしまう)
すると、艶消しの粒子の凸凹の影響がニスの表面張力でカバーされてしまい、ツヤ有の状態になってしまうんですね。
これが、つや消しのトップコートを吹いてもテカる理由です。
つやを消すため、メラミンスポンジで磨きます。
つやを消すため、メラミンスポンジで磨きます。
激落ち君とか呼ばれている、メラミンスポンジです。
メラミンスポンジは、汚れを落とすというよりも、表面をほんのちょっとだけ削ります。(だから汚れが落ちるのですが)
で、ニスでテカった表面をメラミンスポンジで削ることで、表面を凸凹にし、光を乱反射させることができます。
紙やすり等でも凸凹になるのですが、削れ過ぎてしまって、下地まで削ってしまったりします。
それに対して、メラミンスポンジだと、削りすぎることなく、うまくつやが消えます。
下の写真を見ていただくとわかるのですが、前の写真と比べて、テカリがほとんどなくなっているのがわかるかと思います。
つやをある程度コントロールできると、作品の表現幅が広がりますので、作品がテカりすぎ!と思ったときは一度試してみてください。
トップコートの厚塗り+メラニンスポンジの結果です。
トップコートの厚塗り+メラニンスポンジの結果です。
「焼き色の達人」や「色鉛筆」の流れもなく、メラニンスポンジのおかげでバゲットの表面も良い感じです。
全くの私の主観で採点します!
出来上がりは ★5 なのですが、
トップコートを結構沢山使うのと、メラニンスポンジの手間がかかることを思うと、★4つ かな。
(2)トップコート薄吹きの上から水性ニスを塗ってみました。
次に、トップコート薄吹きの上から水性ニスを塗ってみました。
前回の実験では、アクセサリー等には、一番良いやり方だという結果でしたが、実際に作品に試すとどうなるでしょうか。
ところで、ニスを塗るときは、ビンから直接ではなく、一旦塗料皿にとりましょうね。
筆を直接ニスのビンに付けるのは、やめた方が良いです。
というのも、ニスで塗った際に、下地の「焼き色の達人」や、絵具が十分に乾いていない場合には絵具が溶け出して、筆につくことがあります。
その筆をニスのビンに付けると、筆についた「焼き色の達人」や絵具がニスに溶け出し、ニス全体が薄く色づいてしまいます。
こうなると、そのニスは使えなくなります。こういう悲劇を防ぐためにも、ニスを塗るときは、一旦塗料皿にとりましょうね。
ちなみに、私が塗料皿として使っているのは、ワンデータイプのコンタクトレンズのケースです。
ニスや塗料が固まってしまっても、捨てることができるので、結構便利です。
筆は、メイク用の筆を使いました。
筆は、メイク用の筆を使いました。(100均の製品ですが)
通常の絵具用の筆よりも柔らかいので、「焼き色の達人」をこすり取りにくいと思ったので。
塗り方も、筆で塗るというよりも、ニスを少し含ませた筆を押し付ける感じで塗っています。
アンパンはツヤ有の水性ウレタンニス、バゲットは艶消しの水性ウレタンニスを塗りました。
トップコート薄吹きの上から水性ニスを塗った結果です。
トップコート薄吹きの上から水性ニスを塗った結果です。
トップコートの厚塗りとそん色なしで、
「焼き色の達人」や「色鉛筆」の流れもありません。
バゲットの表面も艶消しタイプを使ったのですが、良い感じです。
水性ニスの場合、トップコートと違い、一度乾いた下地は溶かさないので、艶消し材が効いているのだと思います。
ということで、全くの私の主観で採点します!
出来上がり、手間、皮膜の硬さを考えると、★5つ とさせてもらいました。
(3)タミヤニスを塗ってみました。
次は、タミヤニスを塗ってみました。
結果から言うと、思ったよりはよかったかな、というのが感想です。
塗料の粘りが強めなので、ポテッとした感じになるかと思ったのですが、そのようなことは全然なしでした。
アンパンはつや出しニスを使っています。
奇麗なつやは出たのですが、1回で塗る塗膜が厚いので、
乾燥時に少しムラが出て、アンパンの表面が波打つ感じになってしまいました。
あと、多少「焼き色の達人」にもムラができてしまいました。
バゲットは艶消しニスを使ったのですが、テカったりせず、落ち着いた良い仕上がりになりました。
ということで、全くの私の主観で採点します!
手軽に使える良さは有るのですが、ニスの量に対する価格、アンパンの出来から考えると、★3つとさせてもらいます。
(4)メイク用の筆で水性ニスを塗ってみました。
トップコートを使わずに、メイク用の筆で水性ニスを塗ってみました。
アンパンはツヤ有の水性ウレタンニス、バゲットは艶消しの水性ウレタンニスを塗りました。
トップコートを使った場合は、★5なのと、
メイク用の筆は柔らかいので、これだと「焼き色の達人」や「色鉛筆」は流れるほどは強くこすらないかなと思ったのですが、
結果としてはちょっと残念でした。
「焼き色の達人」や「色鉛筆」が流れ出して、アンパンの真ん中あたりが剥がれたり、バゲットのクープの焼き目が落ちたりしてしまいました。
これは、筆で塗るとき、どうしても一度に同じ場所に筆を2,3度重ねて塗ることになるのですが、
最初にニスを塗った際に溶け出した状態になったものが、その直後に筆でこすることになるので、流れ出してしまうのだと思います。
ということで、まったくの私の主観で採点します!
作品への影響が大きく、★2つ とさせてもらいます。
(5)メイクアップスポンジで水性ニスを塗ってみました。
最後は、メイクアップスポンジで水性ニスを塗ってみました。
メイク用の筆に続いてメイク用品なのですが、筆でこするのがダメなのでは、という仮説の元、
メイクアップスポンジにニスを含ませて、ポンポンとニスを塗ってみました。
メイクアップスポンジも、100均で1袋に13個入っているやつを買ってきました。
後で気づいたのですが、レジンの作家さんがレジンのコート剤を塗るときにスポンジを使うのですが、それと同じですね。
ちなみに、パジコさんから、ポンポンアタッチメントという専用品も出ているぐらいです。
アンパンはツヤ有の水性ウレタンニス、バゲットは艶消しの水性ウレタンニスを塗りました。
ポンポンと塗って、ちょっと厚くなったと思ったときは、すぐに反対側でポンポンとやって拭き取る(感じとしては、吸い取るですが)と、きれいに薄く塗れます。
全体に薄塗りをして、ちょっと乾かし、というのを3回ぐらい実施しました。
結果としては、非常に良かったです。
「焼き色の達人」や「色鉛筆」の流れ出しもなかったし、
アンパンは奇麗なつや出しに、バゲットは全然テカらずに塗ることができました。
全くの私の主観で採点します!
手間、仕上がりを考えると、★5つ とさせてもらいます。
結果発表!
結果発表!
メイクアップスポンジで水性ニスをポンポン、が一番きれいに出来上がりますね。
手間も一番かからないですし。
あと、「焼き色の達人」をメインで使った場合は、念のためトップコートをふって、
そのあと、メイクアップスポンジで水性ニスをポンポンが良さそうです。
今回のテストの範囲では、このような結果ですが、
作品や制作環境によっても色々と差があるかと思います。
この記事を参考に皆さんでも色々試してみることをお勧めします。
ニスについての特集はここまでです。
お付き合いいただきましてありがとうございました。
次回から、何について書こうか、決まっていません。
さてさて、どうしようかな。
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