イチゴのケーキを、ちょっとこだわって作ってみました。Vol.1 (くじら亭のミニチュアものづくり)

くじら亭です。こんにちは。
今回も、拙文を読んでいただきありがとうございます。

前回まで、パンについて書いていました。
さて、次は何を書こうかな、と思い過去に書いたネタを見ていると、
バウムクーヘン、ジャム瓶、ざるそば、パン という内容で、バウムクーヘン、ジャム瓶以降、主食系がメインで書いていました。
野菜や果物、スイーツが全然登場してない。お酒が飲めないことも有り、リアルでもスイーツ好きの私としたことが、スイーツが無いなんて!

ということで、今回は果物が登場するスイーツの代表格、イチゴのケーキを書くことにしました。
今回色々試してみて思ったのですが、イチゴや生クリームって、結構奥が深いですね。

※ 当記事は、ミニチュアフードをご自分でお作りの方に、実際の作品の作る過程をネタに、ちょっとした(やや高度な)テクニックや道具・材料の紹介をしたいな、と思って書いています。基本的な道具や材料の使い方までは当記事ではお伝えできないので、ミニチュアフードを作ってみたい、作り方を知りたいと思っている方は、日本ミニチュアフード協会認定コース(基礎・応用)を受講されることをお勧めします。

イチゴが透けていて、ジャムの様な感じに...

ということで、いちごのケーキを作ってみました。

下の写真が、記事を書くために作った試作品です。一つの記事を書くのに、いくつか試作品を作っているんです。
イチゴは、モデナで作ったものを、タミヤのデコレーションカラーで彩色したものです。

写真だとちょっとわかりにくいかもしれませんが、イチゴが透けていて、ジャムの様な感じになっているのが気になります。
もう少し、みずみずしいイチゴにしたいですよね。
あと、クリームもポテッとしているのも気になっています。

ということで、まずはイチゴの改良をするのですが、そのために、なぜジャムのように見えるのかの説明と、どうすればみずみずしい感じになるのかの実験してみました。

※気にしなければ、十分イチゴに見えるし美味しそうなのですが、変なところにこだわってしまうのが私の癖なのでご容赦ください。

多くの絵の具・塗料で、黄や赤は透過色の場合が多いです。

多くの絵の具・塗料で、黄や赤は透過色の場合が多いです。

理由等は存じ上げないのですが、多くの塗料で、黄や赤は透過色、つまり下地の隠ぺい力が弱いんです。
樹脂粘土は乾くと半透明になるので、その上に透過色である赤をそのまま塗ると、透き通ってしまいジャムの様になってしまうんですね。

プラモデルを作る人、特に自動車モデルを作る人は、下地に白を塗ってから黄色や赤を塗ることが多いです。
下の写真の車のプラモデルは数年前に私が作ったものですが、下地に白を塗っているので赤がはっきり出て鉄板のような感じがしますよね。
これを下地を塗らずに赤を塗ると、下地のプラスチックが透けて見えてしまい、いかにもプラスチックという感じになってしまいます。

この、「透過」って結構大事で、
ミニチュアの大根を作る場合、同じ形でも
-上から白を塗ると、全部が大根の皮で覆われているように、
-樹脂粘土に白を混ぜた状態だと、普通の大根に、
-樹脂粘土そのままだと(オレンジをほんのちょっと混ぜるとより良いのですが)、煮た大根に、
それぞれ見えますよね。

ということで、塗料の種類ごとに赤がどのぐらい透けるか、実験をしてみました。

透明プラ板に赤の絵の具・塗料を塗って、透過度を実験をしてみました。

透明プラ板に赤の絵の具・塗料を塗って、透過度を実験をしてみました。

下の写真、左半分が透明プラ板に直接絵の具や塗料を塗っています。
右半分が、白の塗料を軽く塗ってから、赤の絵の具や塗料を塗っています。

それぞれに、いちごによく使われる(と私が思っている)塗料を塗ってみました。
左から、
①日本ミニチュアフード協会オリジナル絵具のいちごレッド、
②タミヤ社のデコレーションカラー(水溶性塗料)イチゴ、
③クレオス社のアクリジョン(水性塗料)のレッド。
です。

塗った後で、透明プラ板の下に、「白い紙に黒い横縞を引いたもの」を敷いてみました。

結構違うでしょ。
左側の下塗りをしていない部分は、①~③まで、下の縞がくっきりといえています。

①オリジナル絵具や②タミヤのデコレーションカラーは、赤が透けるのを防ぐために、隠ぺい材という白系の微粒子を加えているので少し下地をカバーしていますね。
下地をカバーするなら隠ぺい材をたくさん入れればいいのでは、と思われるかと思いますが、この隠ぺい材、たくさん入れると、赤の発色が悪くなりピンクっぽくなので、そのバランスをとってこのぐらいの配合なのだと思います。
アクリジョンは隠ぺい材がほとんど入っていないので、よく透きとおってますね。
ちなみに、アクリジョンは、隠ぺい材がたくさん入った「アクリジョンベースカラー」という下塗り用の塗料をわざわざ発売されています。

右半分の下塗りをしたほうは、三つともほとんど下の縞が隠れています。

透明ではない黄色や赤の食べ物(イチゴやレモンの皮、リンゴの皮もですね)を作る場合には、下塗りをしたほうがよさそうですね。
逆にジャムやトマト、レモンの果実のように透けている食材は、下塗りはしてはいけませんね。

実際に作品に塗るとどうなるか、実験をしてみました。

実際に作品に塗るとどうなるか、実験をしてみました。

モデナでイチゴを作って、下地を塗ったものと塗っていないもので比較しました。

左半分はモデナそのもの、右半分は白を塗りました。
白は、クレオス社のアクリジョンを使用しています。

ちなみにアクリジョンは、乾燥すると塗膜が強いので、こういう下地には適していると思っています。

先ほどのテストと同じ塗料を塗ってみました。

先ほどのテストと同じ塗料を塗ってみました。

まず、左の2つが、日本ミニチュアフード協会オリジナル絵具のいちごレッドを塗ったものです。
左側が下塗り無し、右側が下地にアクリジョンの白を塗っています。
下塗り無しは、透明感が有り、樹脂粘土に赤を練りこんだような感じに見えますね。
下塗り有は、白が目立ってしまって、ピンクっぽくなってしまいました。

真ん中の2つがタミヤ社のデコレーションカラー(水溶性塗料)イチゴです。
同様に、左側が下塗り無し、右側が下地にアクリジョンの白を塗っています。
下塗り無しは、ほかの2つほどではないのですが、多少透明感が有ります。
下塗り有は、赤の発色が良いですね。

右側の二つが、クレオス社のアクリジョン(水性塗料)のレッドです。
左側が下塗り無し、右側が下地にアクリジョンの白を塗っています。
下塗り無しは、透明感が有り、樹脂粘土に赤を練りこんだような感じに見えますね。
下塗り有は、赤の発色が良いです。

同じ塗料を塗ったとは思えない色合いの違いが出ますね。
イチゴの場合には、下塗りをしたほうが良いことが良く判ります。

ということで、原理が分かったところで、この結果をふまえて、もう一工夫した「くじら亭流イチゴの塗り方」、次回の記事でご紹介したいと思います。

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