そば徳利を作ってみました。 Vol.4(くじら亭のミニチュアものづくり)

今回で、そば徳利を完成させます。

前回で、そば徳利の土台が出来上がったので、今回は塗装をします。
上の写真を見ていただくとわかるのですが、今回はきれいな「ぼかし」の入った彩色をしています。
本物の陶器では、釉同士が溶け合ってこんな感じになるのだと思いますが、これを塗装で表現します。
これは、エアブラシの得意技なので、今回はエアブラシで塗装していこうと思います。

※ 当記事は、ミニチュアフードをご自分でお作りの方に、実際の作品の作る過程をネタに、ちょっとした(やや高度な)テクニックや道具・材料の紹介をしたいな、と思って書いています。基本的な道具や材料の使い方までは当記事ではお伝えできないので、ミニチュアフードを作ってみたい、作り方を知りたいと思っている方は、日本ミニチュアフード協会認定コース(基礎・応用)を受講されることをお勧めします。

前回作成した、そば徳利です。少し毛羽立っています。

前回作成した、そば徳利です。

石粉粘土をやすりで削ったので、表面が少し毛羽立っていますね。
写真ではわかりづらいかもしれませんが。

表面に白のアクリル絵の具を塗りました。

表面に白のアクリル絵の具を塗りました。

白を塗ったのは、この上から塗る絵具の発色を良くするというのが一つ目の狙いです。
二つ目の狙いは、アクリル絵の具に含まれるアクリル樹脂によって石粉粘土の細かい繊維をつないで毛羽立ちにくくすることです。

スポンジやすりで削って表面を平滑にしました。

スポンジやすりで削って表面を平滑にしました。

アクリル樹脂で細かい繊維が固められているので、毛羽立つことなく平滑になっています。(写真ではわかりにくいのですが)
これに、エアブラシで着色していきます。

今回はアクリル絵の具をエアブラシで吹きます。

今回はアクリル絵の具をエアブラシで吹きます。

エアブラシで塗装というと、プラモデル用の塗料が思い浮かびますよね。(少なくとも私は..)

塗料としては、まず、俗に「ラッカー系」と言われる、有機溶剤を使ったもの、商標でいうとクレオス社の「Mr.カラー」やタミヤ社の「ラッカー塗料」がありますね。
「ラッカー系」は、乾燥が早いのと、塗装面への食いつきが良いので、エアブラシ塗装には最適です。
薄く塗るとすぐに乾きます。また、塗装面への食いつきが良いので、多少薄めても、エアブラシからの空気圧で流されにくいですね。

他にも、俗に「アクリル系」と言われる、水溶性の有機溶剤を使ったものもあります。
商標でいうとクレオス社の「水性ホビーカラー」やタミヤ社の「アクリル塗料ミニ」がありますね。
「ラッカー系」に比べると、やや乾燥が遅いのですが、エアブラシ塗装には十分使えます。

今回は、そうしたプラモデル用ではなく、ミニチュアフードを制作される方が良く使う、「アクリル絵の具」でエアブラシ塗装をしてみたいと思います。
「ラッカー系」や「アクリル系」では溶剤に樹脂が溶け込んでいるのですが、「アクリル絵の具」はエマルジョン系という(クレオス社のアクリジョンもこの系統です)水の中に、アクリル樹脂が細かい粒で混ざっている状態の物です。
基本的に、「水」なので、塗装した場合にはじかれやすく、少しでもエアブラシからの風圧が強いと、塗った絵具が空気圧で飛ばされてしまいます。
しかも乾きが遅い(ラッカー系と比べて)ので、重ね塗りするのに時間をおく必要があります。

ですので、基本的には「ラッカー系」の塗料がお勧めなのですが、「ラッカー系」は有害性が有るので本格的な換気設備が必須になるのが欠点ですね。
「アクリル系」は「ラッカー系」より少し使いにくくなりますが、本格的な換気設備は無くても、換気に注意して(窓を全開にして扇風機等で風の流れが作る等)使うことできます。

では、なぜ今回「アクリル絵の具」かというと、換気設備がなくても基本的には安全というのも有りますが、「アクリル絵の具」にしか無い色を塗りたい場合が結構あるというのも有ります。
下の写真のイエローオキサイトもそうですが、プラモデル用塗料には、こういった色が少ないですし、これだけの為に塗料をそろえるのも大変なので。

と、前置きが長くなりましたが、「アクリル絵の具」をエアブラシで塗ることもできます!

今回はメーカー(リキテックス社)がホームページでエアブラシでの塗装方法を紹介していますので、それに沿って実施していきたいと思います。
まずは、リキテックスのペインティングメディウムで「アクリル絵の具」を薄めます。

アクリル絵の具がダマになっているとノズルが詰まるので、筆でよく溶かします。

アクリル絵の具がダマになっているとノズルが詰まるので、筆でよく溶かします。

ペインティングメディウムではなく水で薄めてもエアブラシで塗ることはできるのですが、その場合はじかれやすくなったりして相当塗りにくくなります。

ダマが入らない様に、裏漉しします。

筆で溶いても結構ダマが残るので、ダマが入らない様に、裏漉しします。

今回使ったのは、100均で売っている不織布でできた茶濾です。

プラモデル用の塗料だとこのあたりが不要なのですが、チューブ入りのアクリル絵の具を使う場合には必須ですね。

エアブラシで均等に塗装するコツです。

エアブラシで均等に塗装する時のコツの一つに、塗装の最初と最後、折り返しを避けるというのがあります。

エアブラシは最初に空気が噴き出す際に、吹き出し口に残っていた絵具が飛んで飛沫になったりして、均一に塗れないことがあります。
エアブラシの最後も同様です。(最初ほどではないのですが)。
あと、往復させて塗る場合には、折り返し地点で塗装が厚くなるので(スピードが落ちるので長い時間塗装してしまう)ここも避けます。

下の写真で説明すると、スプーンの先の部分に塗装する場合には、下の赤い線の様に塗ります。
下のA,B,Cを、塗装したい部分(スプーンの先)の外に外しています。
  A エアブラシの塗装を開始した点
  B 折り返し点。塗装が厚くなる部分です。
  C 塗装の終点。
すると、塗装対象部分が均等にきれいに塗れます。

エアブラシでアクリル絵の具のイエローオキサイトを塗装したところです。

エアブラシでアクリル絵の具のイエローオキサイトを塗装したところです。

空気圧をやや絞って、エアブラシと本体の距離は、10cmぐらいで塗装しています。
4~5回に分けて、薄く塗っては乾かすというのを繰り返しています。

次にバーンドシェンナを軽く塗っています。

次にバーンドシェンナを軽く塗っています。

上半分だけを、3回ぐらいで塗っています。
元の焼き物の焼き方の特性なのか、濃い色と薄い色の間に、中間色(ぼかしではなく、完全に混ざった色)の部分が有ったので、それを表現するため、中間色を一旦塗っています。

このように一部分だけを塗る場合には、エアブラシと本体の距離は、5cmぐらいで塗装しています。(それ以上離すと、ぼかしの部分が広くなりすぎます)
そのため、空気圧をギリギリまで絞って、絵具を薄めにして塗装しています。薄くしか色が付かないのですが、乾く前に重ね塗りをすると、空気圧で塗料が流れていきますので、我慢して4~5回に分けて塗装していきます。

最後にバーンドアンバーを吹いています。

最後にバーンドアンバーを吹いています。

バーンドシェンナのちょっと上を狙って塗っています。
バーンドシェンナはほとんど見えなくなります。

あと、イエローオキサイトの部分に、バーンドアンバーのツブツブが飛んでいるのが判りますでしょうか。
これは、わざと付けています。本物の焼き物がこうなっていたので。
これは、エアブラシと本体の距離をちょっと開けて(20cm位)塗料を濃い目にしてサッと吹いています。

余談:アクリジョンの「クリア」に混ぜてもエアブラシで塗装できます。

私もそうですが、アクリル絵の具をエアブラシで塗装することがほとんどない方は、ほとんどペインティングメディウムを持っていないと思います。

この場合には、アクリジョンの「クリア」にアクリル絵の具を溶かして、薄め液で薄めるという方法もあります。
(アクリル絵の具との相性にもよると思いますので、このやり方で必ずできるわけではないのですが)
ただ、ペインティングメディウムで薄めるのと大きな違いはないと思います(私が試した範囲では)。裏漉ししなければいけないのも同じです。

まぁ、こんな感じでエアブラシを使ってアクリル絵の具で塗装することはできますが、結構時間と手間がかかります。
その代わり、溶剤を使わないという安全上のメリットは大きいと思います。

出来上がりや手間を考えると、換気設備がある場合には「ラッカー系」を、無い場合は換気に注意して「アクリル系」を使われる方が、便利だと思います。

どの塗料を使うにしろ、筆むらの無い平滑な塗装、ぼかし塗装等、エアブラシでないと出来ないことがたくさんあります。

エアブラシについてもう少し知りたいという方は、GSIクレオスさんやタミヤさんのYouTubeが判りやすいと思います。
エアブラシをこれから使おうという方は、ぜひご参考にしてください。

ということで、今回でそば徳利は完成です。(この後、全体にニスを塗ってます)

次回からは、独特のヒダヒダがあるイタリア菓子「スフォリアテッラ」を作ってみたいと思います。

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