瓶入りのジャムを作ってみました Vol.1(くじら亭のミニチュアものづくり)

今回と次回で、瓶入りのジャム(私の好きなオレンジマーマレード!!)を作っていきたいと思います。

ミニチュアフードの教室に通って、食品やどんぶりを粘土で作れると楽しいのですよね。
色々作り出すと、次にコップやガラス瓶が欲しくなるのですが、これは粘土では作れないので悩んでしまいますよね(私も悩みました)。

そこで、パンを作ったらほしくなる瓶入りのジャムを作り方を紹介します。
今回は、意外と簡単にできる、透明のプラスチックパイプを加工する方法をご紹介します。
プラ板やプラパイプの加工ができるようになると、キッチンの小物が色々作れるようになるので、ミニチュアの世界が少し広がると思います。

そして次週は、市販のシリコン型を使って透明UVレジンで作る方法を紹介します。この方法だと、瓶を開けた状態も再現できるので、表現の幅が広がると思います。

※ 当記事は、ミニチュアフードをご自分でお作りの方に、実際の作品の作る過程をネタに、ちょっとした(やや高度な)テクニックや道具・材料の紹介をしたいな、と思って書いています。基本的な道具や材料の使い方までは当記事ではお伝えできないので、ミニチュアフードを作ってみたい、作り方を知りたいと思っている方は、日本ミニチュアフード協会認定コース(基礎・応用)を受講されることをお勧めします。

材料はタミヤの透明プラパイプ(透明プラ材8mmパイプ)を使います。

今回のジャムの瓶に使ったのは、タミヤの透明プラパイプ(8mm)です。外径が8mm、内径が5mmの透明プラスチックのパイプです。
ドールハウスを作られる方だと、1/12のサイズになるので、同じやり方で5mmのパイプを使用すると1/12サイズにマッチします。
通販等で買われる場合の参考に、正式名称は「タミヤ 楽しい工作シリーズ 透明プラ材 8mmパイプ(3本入)」です。

タミヤの透明プラパイプは、タミヤの白いプラ板よりも少し硬くてもろい感じで、ニッパ等で挟むと、切れるというより砕ける感じになります。
これを切ったり削ったりしてジャムの瓶にしていきます。プラ板だとカッターで切れるのですが、パイプをまっすぐに切る/削るというのは、やり方にコツが有ります。

丸いものをまっすぐ切ったり削ったりするのには目安となるものが必要です。
今回は、8.5mm幅と1.5mm幅に切ったマスキングテープを1.5mmの間隔をあけて巻き付けてガイドにする方法を使いました。8.5mm幅に切ったテープを一周半ぐらい巻きつけます。端っこがぴったり重なったらまっすぐに巻き付いています。重なりがずれたら曲がっている証拠なので、ぴったり重なるまでやり直してください。8.5mmのマスキングテープを張った部分が瓶の本体、1.5mmのマスキングテープの部分が瓶のふたになります。このマスキングテープに沿って切ったり削ったりします。

通常よく使う黄色いマスキングテープは透過性が有るので透明パイプとの境目が判りにくいので、今回はmt社のマスキングテープを使っています。ちなみにこのmt社の単色のマスキングテープはそこそこ厚みが有りしっかりしているので、リボンのミニチュアを作るのにも使えると思っています。(そのうち試してみます)

プラパイプを切るには、プラスチック用のこぎり(オルファのカッターの替刃として売っています)を使います。

透明プラパイプを切るときは、、プラスチックを切るためのノコギリを使います。
カッターではうまく切れません。透明プラスチックは表面がつるつるなので、カッターが表面で滑ったりする上に、硬くて弾力があまりないのでカッターがなかなか深く入らないためです。また木工用のノコギリでは目が粗すぎて、引っかかってしまいうまく切れません。

プラスチックを切るためのノコギリですが、カッターの替刃として売っているプラスチック用のこぎり替刃が有りますので、適用できるカッターをお持ちならそれで十分です。
また、カッターの柄と替え刃がセットになったものも販売されています。

製品としては、「オルファ OLFAXB167Aホビーノコ・替刃(広刃) 」というもので、オルファの「アートナイフプロ」や「リミテッドAK」、それのOEMであるタミヤの「モデラーズナイフPRO」や「モデラーズナイフ」といったカッターの柄にも取り付けることができます。
柄とセットになっている製品としては、オルファの「ホビーのこ」やそれのOEMであるタミヤの「カッターのこⅡ」が有ります。

どちらもそんなに高価では無いので、今回瓶を作ってみようという方は購入されることをお勧めします。

詳しくは、オルファ社のWEBサイトをご覧ください。

そのプラスチック用のこぎりを使って、まずは下の写真の中の断面図の様に、マスキングテープの隙間の部分の黄色い部分を切り込むようにします。
のこぎりを2~3回前後させたら30度ぐらい動かす、という感じでちょっとずつ切り込みを入れていきます。溝が0.5mmぐらいになったら終了です。続いて、溝の残りの部分(オレンジの部分)を薄いやすり(プラスチックモデル用の小型の半丸やすり)で削ります。例えばタミヤのベーシックヤスリセットの「半丸」が該当します。今後プラスチックの加工が増えそうだという方は、持っていると色々使えます。

お持ちで無い場合はカッターで削り取るようにするのですが、硬いうえに滑りやすいので注意してください。

溝の部分の加工が終わったら、プラスチック用のこぎりで両端をマスキングテープに沿って切り落とします。あとでやすりがけをして整えますので、マスキングテープより少し外側(0.5mm程度)をカットしてください。

ジャム瓶(プラパイプ)とジャム(UVレジン)をなじませるため、内側をやすり掛けします。

両端や溝(瓶のふたの下の溝)は、切っただけだとささくれ立っているので、やすりで削って滑らかにしておきます。
特に両端は、大体マスキングテープの縁ぎりぎりまで削っておきます。

削り終わったらマスキングテープをはがします。マスキングテープは、削り終わってからはがすようにすると、やすりで瓶の部分に傷をつけてしまうのを防ぐ効果もあります。

なお、溝の部分ですが、やすりで削った後が白くなってしまう場合は、レジン用のコート剤やタミヤカラーのクリアを塗っておきます。そうすると、ある程度透明になります。

外側が出来上がったら、内側を全体にやすり掛けをしておきます。
やり方としては、#600位の紙やすりを1cmほどの幅に切り、やすり面を外側にしてパイプの中に入る様に丸めて、中全体が白くなるように回しながら上下させます。下の写真の様に内側全体が白くなるまでやすりで削ります。
これはジャム瓶(プラパイプ)とジャム(UVレジン)をなじませるために実施しています。この方法、レジンでアクセサリーを作るときにも応用できると思います。なぜこんなことをやらなければいけないか、次の写真で説明しますね。

ツルっとしたプラスチックとUVレジンは、硬化時に隙間(空気の層)ができることが有ります。

ジャムに使用するUVレジンは、硬化する際に熱を持ち膨張しますが、さめる時にその分縮みます。

この縮む際に、プラパイプの内側がツルっとしたままだと、UVレジンがペリッとはがれてしまいわずかな空気の層ができてしまいます。空気の層の有無で光の屈折が変わってしまい、下の写真の様になってしまいます。

下半分は、空気の層ができずに完全に密着しているので、光の屈折の加減でジャムが瓶一杯に広がって見えるのですが、上半分はUVレジンとプラパイプの間に空気の層が有るため、光を反射して分厚いガラス瓶の様になってしまいます。

実物のジャム瓶は、下半分の様に見えるので、空気の層が発生しないようにしなければいけません。
そこで、UVレジンが縮む際にプラパイプからはがれにくくするため、紙やすりで細かな傷をつけておきます。こうすることで、傷の部分にUVレジンが入り込んで、縮むときにUVレジンとプラスチックがかみ合ってはがれにくくなるためです。これを「表面を荒らす」と言うのですが、金属を瞬間接着剤で接着するときなどによく使うテクニックです。(あとで、ラベルを張るときに同じことをやっています)

ジャム(オレンジマーマレード)は、UVレジンと粘土で作っていきます。UVレジンの気泡には気をつけましょう。

プラパイプを削ってできたジャム瓶にUVレジンを流し込んでいきます。

削り終わって瓶らしくなってきたプラパイプを、写真の真ん中の様に、両面テープで平らなものに固定します。

そして、まずは瓶の底を作ります。透明のUVレジンを爪楊枝につけて、プラパイプの周りにつかないように、慎重に底の部分に入れていきます。透明なUVレジンの層が1~2mmほどになったら気泡が入っていないことを確認してください。気泡を全部つぶし終えたらUV照射器でUVレジンを固めます。

底ができたら今度はオレンジマーマレードの部分を瓶の中に入れていきます。
マーマレードの液体部分はUVレジンにオレンジの着色剤を入れたものを使用します。着色剤には、パジコ社の「宝石の雫」を使用しました。

オレンジの皮の部分は、パジコの粘土(モデナ)にオレンジの絵の具を少量混ぜたもので作っています。粘土を薄く伸ばして丸い棒に巻き付けて乾燥させ、片面に赤+オレンジを濃い目に塗り、薄くスライスしたあと細かく切り刻んで使用しています。

マーマレードはUVレジンと皮の部分を混ぜてから瓶に入れると気泡ができやすいので、ますUVレジンを7割位入れておきます。そして、上からオレンジの皮を入れて爪楊枝で押さえてゆっくりひとつづつ沈めていきます。ここで急いでやると気泡が入ってマーマレードらしくなくなるので、ゆっくり気泡を入れないように沈めていってください。
あとは、様子を見ながらレジンまたは粘土を追加していきます。

大体、瓶の溝の部分(削って細くした部分)までマーマレードが来たら、一旦UV照射してUVレジンを固めます。
なお、粘土や着色剤で光の透過が悪くなっているので、UVを長めに照射します。

透明レジンで蓋の部分を少しだけあふれるぐらいに埋めておきます。

最後に透明レジンを蓋の部分に入れます。パイプの穴を透明レジンでふさぐ必要が有ります。そのためレジンがほんの少しあふれてぶっくりしている状態にします。

その状態が下の写真です。結構ジャム瓶らしくなってきたでしょ。

蓋の部分の少しあふれたUVレジンをやすりでまっすぐにします。へこみ等が有れば、もう一度UVレジンを擦りこみましょう。

蓋の部分の少しあふれたUVレジンを、やすりでまっすぐにします。削り終わったら、じっくりと見てください。

よく見ると、へこみや隙間ができている場合が有ります。
塗装の知識が有る方はパテで埋めたり、サーフェーサーをかけて傷や隙間を埋めるのですが(私もそうしています)、やり方をご存じない方は、UVレジンをもう一度擦りこんで隙間を埋め、再度やすりで平らにしましょう。

ほぼ平らになったら、蓋を塗装しておきます。
今回は、タミヤの水性塗料(タミヤカラー)の金色を塗っています。

ラベルはコピー用紙にプリンターで印刷したものを使いました。

ラベルは、今回はあまり特殊なものは使わず、コピー用紙にインクジェットプリンターで印刷したものを使用しました。

ある程度サイズを想定してラベルを作るのですが、実際に貼ってみるとイメージと違ったりするので、写真の様に、やや大きめ、やや小さめ等3~5段階ぐらい印刷しておいて、実際に当ててみて確認すると良いですよ。

プラスチックに紙を貼るときは、プラスチックの表面を「荒らして」おきましょう。

ラベルの貼り付けには、プラスチックにも接着できる木工用ボンドを使用します。
製品としては、コニシ社の木工用多用途ボンド(緑色の容器)やタミヤのクラフトボンドなどが有ります。

この際、UVレジンの時と同様、プラパイプの表面がつるつるなので、簡単にはがれることが有ります。
そのため、プラスチックの表面を「荒らして」おきましょう。

プラスチックの表面を荒らす際に、ラベルを接着する場所以外は荒らしてはいけないので、傷防止のため、マスキングテープを使用します。

マスキングテープをラベルの大きさに切り抜き、写真の様に、ラベルを貼り付ける部分が丁度切り抜いた部分になるようにマスキングテープを貼り付け、#600の紙やすりであまり力を入れずに(マスキングテープがはがれない程度)荒らしておきます。

ここで、真ん中を切り抜いたマスキングテープって、貼り付ける時に形が変わってしまい(長方形の部分がひし形やスピンドル型になったりしませんか?)、うまく貼れない場合があると思います。
次の写真で、真ん中を切り抜いたマスキングテープをうまく貼る方法を次に紹介しておきます。

荒らし終わったら、マスキングテープの切り抜いた部分にボンドを塗ってからマスキングテープをはがして、ボンドがついている部分にラベルを貼り付けます。

真ん中を切り抜いたマスキングテープをきれいに貼る方法です。

真ん中を切り抜いたマスキングテープの、切り抜いた形を崩さずにはがして貼る方法です。

まず、マスキングテープをカッティングマットに貼り付けて、真ん中を切り抜きます。そして、切り抜いた部分より一回り大きいマスキングテープを、切り抜いた部分を完全に塞ぐように貼り付けます。
こうすると、切り抜いた部分の形が変わらずにカッティングマットからはがすことができます。このマスキングテープをプラパイプ貼り付けて、そのあと上から貼り付けたマスキングテープをはがします。
これで、形が崩れずに貼り付けることができます。

ラベルを貼り付けたら出来上がりです。

ラベルを貼り付けたら出来上がりです。

こうして写真にとると、プラパイプに溝を入れたものとは思えないでしょ。

次回は、市販のシリコン型と透明UVレジンで作ってみたいと思っています。UVレジンで作ると多少手間がかかりますが、蓋を開けた状態を再現できたりします。

よろしくお願いいたします。

番外編:8角形も作ってみました。

実は、簡単にできるなら記事にしようと思って同じ素材で8角形の瓶も作っていました。

綺麗な8角形を削り出すのが大変で、そのあとも削った表面をつるつるになるまで磨くことも結構大変でした。その割に、下の写真を見ていただくと判るように、見た目にあんまり変化がないんです。言われないと8角形だと気付かないでしょ。
ということで、今回はボツにしたのですが、結構苦労したので紹介だけさせていただきました。

 
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